11.25.04:36
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03.30.00:06
in my pocket
君はなにかを探すように
僕のポケットに手を入れて
不意になにかを見つけたように
あたたかいねと笑う
僕らは川の向こうの 白んだ空を見つめながら
もう長いこと運転を見合わせている春を
河原のホームでじっと待っていた
河原のホームでじっと待っていた
君はすぐに迷子になる子どものように
僕の手をすぐに離してしまって
誰も知らない場所で怯えるように
よく泣いていた
僕らが思うよりもこの世界は広すぎて
一度はぐれてしまった恋は
もうこの河原じゃ見つからなかった
もうこの河原じゃ見つからなかった
僕らは時計の長針と短針のように
いつもセットで歩んできたけど
君が本当に望むときに
僕は君に重なり合うことができていただろうか
僕は君に重なり合うことができていただろうか
0時の鐘の音を鳴らすことができていただろうか
3時をすぎても 眠れない夜は
どこからが「おはよう」なのだろうと考えてしまう
ベッドに張り付いた僕の顔は画面に照らされたまま
そのまま朝の光に紛れていく
少し早起きになったお日様を カーテンの隙間から覗く
遅刻してきた春が 何事もなかったかのように
堂々と河原のホームに到着をしたらしい
堂々と河原のホームに到着をしたらしい
桜の花びら達は僕の手から逃れるように地面に舞い落ち
僕の足元で戯れるように風と踊った
肌寒さから 不意にポケットに手を入れると
乱雑に折りたたまれた硬い銀紙が手に当たった
いつのものともわからないそれを
空にかざして眺めてみる
古びた紙っはしが世界の片隅で光った
君の探し物は見つかっただろうか
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03.29.00:34
赤青えんぴつ
僕らは 赤青えんぴつだった
彼女は赤えんぴつのように忙しくて
誰かの答えに頷いたり首を振ったり
助言は相手の答えの邪魔にならないように
そっと右側に添えてやったり
実にたくさんの人から彼女は愛されていた
僕は青えんぴつのように出番が少なくて
賑やかな声の隙間に
静かに相槌を打つことしかできなかった
静かに相槌を打つことしかできなかった
僕の先は丸くなったまま 誰も削ってくれなくて
いつも申し訳なく太い円を描いた
最後は僕だけが残ってしまってね
君がいなきゃ相槌を打つこともできなくて
いつのまにか筆箱から出されることも少なくなって
気がついたら
職員室前の忘れ物箱が僕の住処になっていたよ
職員室前の忘れ物箱が僕の住処になっていたよ
今は僕らの代わりに
3色ボールペンって奴らが幅を利かせているらしい
そんな時代さ
君は君の時代を生き
僕は僕の時代を生ききれなかった
僕は僕の時代を生ききれなかった
日々短くなっていく君は 運命を生きるように
健気で孤高で刹那的で
とても美しかった
「傷つくこと」は恐ろしいことだろうか
でも本当に恐ろしいのは「何もしないこと」だ
「転ぶこと」ではない
「置いて行かれる」ことだ
「置いて行かれる」ことだ
誰も削ってくれないのであれば
自分で削ってやればいい
共に呼吸をするのは ほんの一瞬の間
今度こそ
本気で誰かを愛すように
自分の足で時代を踏みしめたい
今度こそ
僕は僕の時代を生きよう
03.28.00:28
私が見つける星
私は 私を決めてこなかった
苦手だった漢文の試験問題のように
消去法で残った番号を選んで来ただけ
今 クラス替えを繰り返す教室から
初めて外の世界に飛び出したときに
名札を外された私は 私を人に説明できなかった
役がないのに現場に迷い込んでしまった役者のように
うろうろとあたりを歩き回るしかなかった
そして何より私を一番驚かせたのは
私の小さい身体なんか一瞬にして飲み込んでしまうほどの
無数の光で埋め尽くされた圧倒的な星空だった
無限にも思えるその星々から
私は私の星を選び そこに向かうことなど到底不可能に思えた
息をするのも忘れて途方に暮れてしまった
と同時に
1つを選び そこへ向かって泳いでいく人々に
長い間 見とれてしまった
必死に泳ぐ不恰好な後ろ姿を
1つも笑うことなく 真剣な眼差しで見送った
なぜ迷うことなくあんなにまっすぐ進めるのだろう
私は私の隣で 私と同じように
星を選んでいるであろう男性に目をやった
違うのだ
星を眺めているのではなかった
空を仰いで 目を瞑っているのだ
自分を眺めているのだ
私も目を瞑ってみる
私は何がしたいのだろう
初めて自分に聞いてみる
何度も自分に聞いてみる
何度も何度も聞いてみる
何度も何度も聞いてみる
まぶたの裏が熱くなって来る
どうしてこんなに涙が出るんだろう
声を出すことなく 静かにたっぷりと流した
春の夜風が すうすうと乾かしてゆく
時は経つのではく満ちていった
そして ゆっくりと 目を開けた
03.27.00:23
時間
時間は
進んでいって 運んでいって
花が咲いていって 花が散っていって
過ぎていって 消えていくね
そしてまた
時間は
生まれていって 刻まれていって
思い出を作っていって 思い出を薄めていって
飲み残された アイスコーヒーだね
時間は
あたたかくなくて つめたくもなくて
置いてきぼりで 寂しくって
その昔 僕たちが作ったまま
夕方のチャイムに取り残してしまった
置いてきぼりで 寂しくって
その昔 僕たちが作ったまま
夕方のチャイムに取り残してしまった
砂場のお山だね
03.26.00:41
メロスの理由
回り回る 一週間
僕がスーツでボールペンを回せば
あいつはトレーに乗ったパンを回す
くるくる くるくる
正面から螺旋階段を昇る人
裏山から崖をよじ登る人
辿り着くのは同じ場所
それぞれ見てきた景色 伝え合えばいいさ
一緒に笑ったね 一緒に泣いたね
教室を飛び出してから それぞれ分かれた道
膝を擦りむいても メロスのように走った
君もどこかで走っている
巡り巡る 人人人
西の空でさよならと手を振れば
東の空でおはようの手が揺れる
ぶんぶん ぶんぶん
喜びから愛を知る者
悲しみから愛を知る者
目に見えるのは同じ形
それぞれ抱いてきた気持ち 語り口が違うのさ
何に笑っている 何に泣いている
山頂で再会してから ふたたび分かれた道
振り返ることなく メロスのように走った
君もどこかで走っている
君もどこかで走っている