11.22.06:37
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11.14.03:20
北風は運べない
「一雨ごとに気温は下がってゆくでしょう」
今朝の天気予報を思い出しながら
ハンドルに顎を乗せて空を見上げる
冬に向かってゆく北風の冷たさは
何も終わっていないのに終わりに向かってしまう
「切なさ」を持っている
すべてをピューピューと運んでしまうのに
すべては運んでくれないのだ
それは中高生の受験期によく似ている
季節を運び 人を運び 時代を運ぶ
だがしかし北風は
僕の気持ちだけは
どこにも運んではくれなかったのだ
思えば「片想い」とはそういうものだった
どこにも運ばれることもない
どこにも転がることもない
決して動かないもの
世の中が一斉に年を跨いで行く中
弟が新しい凧を空に飛ばす中
僕は僕のまま年を越えるのだ
肩を叩くように水滴が窓を小さく叩いた
国道沿いを歩く学生達
傘をさす者 慌てて自転車の速度を上げる者
僕はワイパーを振りながら仕事場へ向かう
僕らはどこかへ運ばれるようで
きっとどこにも運ばれない気持ちを持っている
もうすぐ北風が強くなる
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11.11.00:44
青リンゴ
いつも結論ばかりを振りかざして
足りないものを並べて怒っている
あのときの私は 彼の言葉がすべてだった
彼がいう愛 私が思う愛
色が違いすぎてとても同じものとは思えなかった
赤リンゴと青リンゴのよう
甘いようでいて とてつもなく酸っぱい
「抱きしめる」と書くと温かいが
「抱き締める」と書くと怖さがある
「想い」には空を飛んで行く自由があるが
「重い」には鎖に繋がれた鉄球の束縛がある
彼はよく「信じていたのに裏切られた」
と言っていたけれど
と言っていたけれど
そんなことを言ったら
子ども達はどこに夢を書けばいいのだろう
恋人達の「ずっと一緒にいよう」は
きっと約束だったとしても約束ではなく
それは「願い」だ
言ったことを実行できなかったら罪だろうか
人も 言葉も 夢も 想いも 時代も 変わる
変わっていい
誰が責めることができるだろう
変わることを責められて
変わって行く自分を責めながら生きることは
とても苦しい
「今この瞬間に感じる想いを
言葉にすることを怖がってはダメだ」
言葉にすることを怖がってはダメだ」
そう思えるようになったのは
彼と別れてずいぶん経ってからのことだった
「愛」という言葉は 力強くて ズルい
チャンスを与え やり直し
もう一度信じてみたくなる
「愛」とは「支配」ではないのに
そんなのわかりきっていることなのに
私は彼に抱き締められながら
星を滲ませながら 頷きながら
「もう一度」を与えてしまうのだ
あのときの私は彼の言う「愛」という言葉が
いつかは赤くなることを
バカみたいに祈ってしまうのだった
永遠を歌うにはあまりに早すぎる
時を待てずに刈り取られた
かわいそうな青リンゴ
10.28.21:25
雨音
雨の音をずっと聴いていると
悲しい気持ちと穏やかな気持ちとが
コーヒーに入れたミルクのように
ゆっくりと渦を巻いて混ざり合う
窓の向こうの雨音は
いつか青い長靴で水たまりの中を 家まで帰った足音で
かわいらしくさみしそうに鳴っている
なんでこんなに降るのですか
どうしたら止むのですか
僕は小さい黄色い傘から空をのぞいて
必死に耳を澄ましてみたけど
雨足ばかりが強くなって
小さい傘を叩くばかりで
雨さんの答えは聴こえなかった
雨さんの答えは聴こえなかった
過ぎ去りしはるか遠くの日々の
色あせた景色が
街から彩度を下げた今日の雨景色と重なる
なんでこんなに降るのですか
どうしたら止むのですか
窓の向こうの雨音に
耳を澄ましながら
少し冷めたコーヒーを飲む
10.06.17:37
まっしろな朝
朝 取り残された水たまりで
一枚の枯葉が泳いでいる
一枚の枯葉が泳いでいる
どこにも行けない 行かないけど
今日は少し浮かんだままでいよう
プカプカと
明日に向かう時間と人が追いかけっこ
しわくちゃのエブリデイ
しわくちゃのエブリデイ
心のはじっこ持って 真っ白なシーツ
今日はめいっぱい空に広げてみよう
バサバサと
明日のことを考えずに
今日のことを想いながら眠れたらいい
僕はときどき 明日に色を塗りすぎちゃう
わからないものを わからないままにしておけなくて
明日はあまり嬉しくなさそう
だから今日はまっしろな朝
さあ どうしよう
さあ どうしよう