04.20.11:08
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03.27.00:23
時間
時間は
進んでいって 運んでいって
花が咲いていって 花が散っていって
過ぎていって 消えていくね
そしてまた
時間は
生まれていって 刻まれていって
思い出を作っていって 思い出を薄めていって
飲み残された アイスコーヒーだね
時間は
あたたかくなくて つめたくもなくて
置いてきぼりで 寂しくって
その昔 僕たちが作ったまま
夕方のチャイムに取り残してしまった
置いてきぼりで 寂しくって
その昔 僕たちが作ったまま
夕方のチャイムに取り残してしまった
砂場のお山だね
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03.26.00:41
メロスの理由
回り回る 一週間
僕がスーツでボールペンを回せば
あいつはトレーに乗ったパンを回す
くるくる くるくる
正面から螺旋階段を昇る人
裏山から崖をよじ登る人
辿り着くのは同じ場所
それぞれ見てきた景色 伝え合えばいいさ
一緒に笑ったね 一緒に泣いたね
教室を飛び出してから それぞれ分かれた道
膝を擦りむいても メロスのように走った
君もどこかで走っている
巡り巡る 人人人
西の空でさよならと手を振れば
東の空でおはようの手が揺れる
ぶんぶん ぶんぶん
喜びから愛を知る者
悲しみから愛を知る者
目に見えるのは同じ形
それぞれ抱いてきた気持ち 語り口が違うのさ
何に笑っている 何に泣いている
山頂で再会してから ふたたび分かれた道
振り返ることなく メロスのように走った
君もどこかで走っている
君もどこかで走っている
03.25.00:31
Black board and White paper
何を書くのか忘れてしまった教師は
チョークを握ったまま 黒板を見つめてしまう
一人の生徒の囁きに救われ そうだそうだと
照れ臭そうに 一文字目を書き始めたら
チョークは一気に 粉を噴きながら黒板を走った
頭じゃなくて身体で覚えていたんだな
いくら考えても出てこないはずだよ
粉がついた手を叩きながら 数歩後ろに下がる
黄ばんだ写真を見つめるように 黒板を眺める
生徒は必死にそれを写す
真っ白なページに黒い鉛筆で
覚えるように書いてゆく
私はツルツルの黒板に白いチョークで
思い出すように書いてゆく
同じ言葉を
03.24.00:02
元素記号「Ir」
「イマ」という瞬間を
いったいどれくらい確かな紐で 結ぶことができるだろう
向かいの家の雨戸は毎朝6時に必ず開く
3日前に宣言されたダイエットがある
河原ですれ違う老人は
1週間後もラジオを流しているか
1週間後もラジオを流しているか
付き合い始めた恋人たちの3ヶ月後はどうだ
1年後 あの店の人気ナンバーワンメニューは
まだ学生たちの放課後のお腹を救っているか
まだ学生たちの放課後のお腹を救っているか
お気に入りのマグカップは
3年後の朝も 彼の口にコーヒーを運んでいるだろうか
3年後の朝も 彼の口にコーヒーを運んでいるだろうか
「僕ら」は 10年後も「僕ら」だろうか
約束は なぜ結ばれるのだろう
「絶対」という紐を使って 固く「約束」を結ぶ
疑いの風も吹かず 確信という無風の中 それは結ばれる
けれど 時間は ゆるやかに
やはり 確かに 解いていく
やはり 確かに 解いていく
紐の端を魚にくわえさせ 川に流す
だから海は 約束の紐が海藻みたいに揺れている
たとえば僕は
果たされなかった約束をすでに持っている
固く結んだはずの紐はいつの間にか消えていた
手のひらに残った約束は
汗でインクが滲んでしまってもう読めない
「僕ら」は「僕ら」でいられなかった
空の青さは秋になれば薄くなるし
たとえ夏が巡っても もう二度と同じ入道雲は作られない
それでも「僕」は「僕ら」であることを願うのだ
それはもう 小指を結ぶ「約束」ではなく
胸の前でゆっくり両手を握り合わせる
「祈り」
気体のように 目に見えなくて
大気中にいっぱい拡がっていく
人はそれを吸って 「イマ」を生き
未来に向かうのだ