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夢
夢
自分自身を信じるしかないんだ
やめてしまえば
それまでなのだから
by ジャマール
自分自身を信じるしかないんだ
やめてしまえば
それまでなのだから
by ジャマール
NHKハイビジョンスペシャル『トップ・デザイナーはこう育てられる』(初回放送2001年)。
アントワープ王立芸術アカデミー・ファッション科。世界中から集まったクリエイターの若者たち、その創作に打ち込む姿を密着取材した番組だ。
アントワープ王立芸術アカデミー・ファッション科。世界中から集まったクリエイターの若者たち、その創作に打ち込む姿を密着取材した番組だ。
入学者は60名ほどで、進級試験でふるいにかけられ、卒業できるのはほんの1割程度。
技術不足に苦しむ者、自分の独創性を探す者、皆、先が見えない中で、ただ毎日自分を見つめ、同時に手を動かしてゆく。止まって考える時間はないのだ。
何が正解かわからなくなる。そもそも正解などないのかもしれない。
でも、どこかで自分を納得させなくては、その道は歩いていくにはあまりにも果てがなさすぎるように思える。
何が正解かわからなくなる。そもそも正解などないのかもしれない。
でも、どこかで自分を納得させなくては、その道は歩いていくにはあまりにも果てがなさすぎるように思える。
そんな取材の中、ある一人の若者が、インタビュアーに語った言葉。
「自分自身を信じるしかないんだ
やめてしまえば
それまでなのだから」
作業をしながら番組を流していた僕の目を留まらせたのは、
この「やめてしまえば」という表現だった。
「あきらめてしまえば夢は終わる」ではなく、
「やめてしまえばそれまでなのだから」。
「あきらめる」とか「あきらめない」とかの「気持ち」が先立つのではなく、
「やめる」か「やめない」かという「行動」が、重要だということだ。
そして、その果てない道を歩み続けるためには、「自分を信じる」しかないということだ。
そして、この言葉を、まさに彼は自分の作品に向かいながら、手を動かしながら話していたのだ。
そうだと思う。
僕らは手を止めたら、もう何もその先には生まれない。
その瞬間に止まる。
「手を動かせ
拠り所がないことなんてない
あなた自身が何よりの拠り所だ」
そんなふうに聴こえた。
正解も何もない中で、不思議と「これだ!」と思える瞬間がある。
手を動かそう。
やめてしまえばそれまでなのだから。
12.01.22:05
紙さまどうかよろしくね
真っ白な紙さまに向かうときは
いつだって腰が重たくなるものさ
とても体力がいることだし
とても集中力がいるものだから
いつも音楽さんは僕と一緒だけれど
今日のところは
音楽さんもお留守番をしてもらっている
連れて行けるのはコーヒーくんだけだ
やっと電池を入れ替えて動き出した時計ちゃんは
昔のリズムで今日を刻んでくれている
ちょっぴり大きな音だけどね
鉛筆のヤツとはもう長い付き合いさ
わかっているだろ
紙さまどうかよろしくね
11.22.04:11
水晶玉の石
若い子ってさ
そんなひとくくりで話し始めてしまうけど
今日はこの言葉から始めたい
「終わる」ということが想像できてない
「もう二度ともとに戻らない」ということも
なぜだろう
彼女は「リセットしたい」と呟いていたけれど
「リセットできる」と
どこかで思っているのだろうか
そんなことはありえないのに
「リセットできる」と
どこかで思っているのだろうか
そんなことはありえないのに
小学生の頃だったろうか
川に連れて行ってもらった夏休みのある日
父は河辺で平べったい石をすっと選んでは
腕が水面に水平になるようなサイドスローで
素早く石を滑らせるように投げた
石は川に沈むことなく水面の上を3歩4歩と
飛び跳ねるように遠くに消えて行った
ドキドキした
不思議でならなかった
僕は父の投げ方を一生懸命真似をしてみた
投げる瞬間
何度も父が投げた石の軌道をイメージをしたけれど
何度やっても石は乗り気にならないようで
ポチャンと一度だけ音を立てて
沈んで行ってしまった
僕は父にどうやったらできるのかせがんだ
すると父は
「平らな石の方が成功しやすいんだよ」
と教えてくれた
僕はすぐに自分の足元を必死に探し始めた
そして平らな石を探しては何度も投げた
何度も 何度も
そのうち人差し指が石の摩擦で痛くなって来た
そのうち たしか
僕は水切り遊びを上手にできるようになったと思う
でもそれよりも何よりも僕の記憶に覚えているのは
成功した瞬間の風景ではなくて
水切り遊びも終盤に差し掛かった頃に見つけた
一つの石のことだ
それは平べったいというよりは
どちらかというととても球体に近いものだった
こんな見事な球体の石を僕は見たことがなかった
まるで丸い水晶玉が
そのまま化石化したような形だった
僕は旅行中ずっとその石を持っていたのだけれど
最後の日にどうしようもない欲求が
僕の心の中に充満して行った
「この石で水切りをしたら一体何回跳ねるだろう」
決意と躊躇が足元に寄る川の水のように
何度も行き来をしたが
結局最後は父を真似た渾身のサイドスローを決めた
どこまでも跳ねていく頭の中のイメージとは裏腹に
水晶玉は勢いよく水面に当たると
そのままの勢いで川の中に沈んで行った
激しい後悔が襲った
僕は急いで足元に転がる石たちの中から
もう一度水晶玉を探そうとした
似たような形のものは片っ端から拾って行った
やがて帰る時間も差し迫って来て
両親は諭すように遠くで僕の名前を呼んだ
僕は目ぼしいものをいくつか選んで
急いでポッケに入れた
家に帰ると
机の中の宝物箱の中にその石達をそっとしまった
夜毎にその箱を開いては
石達を手に取ってみたけれど
やはり僕の頭の中にはいつも
あの水晶玉のことがあった
なぜ投げてしまったのだろう
夜になると僕は何度もそのことばかりを考えて
後悔を拭うように寝返りを打っていた
そんな記憶がある
お気に入りの石を
川に投げてしまったあとに
同じようなものを探しても
もう二度と見つからなかった気持ち
それはそのまま人との出逢いや別れそのものだと
大人になってから思った
そんな思い出や記憶が彼女にはないのだろうか
わからない
わからないけれど
少なくともこれだけは彼ら彼女達に言おうと思う
チャンスは何度でもある
けど
失ったらもう二度ともとに戻らない
失ったらもう二度ともとに戻らない
もしもう一度手にしたとしても
それはもう別の石だ
11.16.01:42
then and now
目の前でひらりと落ち葉が舞って
「冬が来たのだ」と思っていたけれど
毎日通る玄関の片隅に
すでに落ち葉がたくさん集まっていたのを
僕は気づかなかった
ちょうど宅配便のドライバーさんが来て
アマゾンで頼んでいたものを思い出したけど
毎日通る玄関の郵便箱に
すでに雨に濡れた不在票が入っていたのを
僕は気づかなかった
僕はいろんなことに申し訳なく頭を下げて
やっと駐車場から車を出すと
すぐに小さな川を跨ぐ道路に差し掛かった
川沿いのサイクリングロードから
下校途中のある一人の中学生が
僕の車が通り過ぎるのをじっと待っている
何年も幾度となく歩いた通学路を
誰かを想いながら歩いた景色を
時速40kmで通り過ぎて行く
まるで走馬灯のように
この世で気づく一瞬というのは
その連なりに気づくことに他ならない
たとえばそれは
軒先の氷柱に気づくことに等しい
ある朝 長い氷柱に気づきながら
氷柱を長くしたそれまでの時間に気づくのだ
たとえばそれは
僕と君が出会ったことにも等しい
ある日 お互いの「今」で結ばれながら
僕らは僕らになったそれまでの人生で結ばれるのだ