11.22.13:59
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03.07.12:07
「依る」のではなく、「帰る」
「依る」のではなく、「帰る」
風の強い日だった。
差された花は、たぶん、アイツが置いて行ったものだろう。
1年に1回、必ずここに来るようにしている。
1年の経過を確かめるように、22歳から数えるように、今に頷くように。
近況報告をする。誰にも言えないこともある。ちょっと情けない自分もいる。今の自分はどうかな?なんて聞きながら、ダメだよなって笑いながら、最後は、「がんばるよ」って言葉で結ぶことにしている。いつもの問答だ。
1人で来たのは久しぶりだ。
でも、あのときとは意味が違う。
それぞれの時間が経つということは、それぞれの時間に彩られるということで、僕らの色はそろそろ、混ざり合う場所も余白もなくなってきている。
気づいたときは寂しかったけど、今となっては、それが誇らしくも思う。
既存のものにみんなが一斉に依るのではなく、1人1人が新たに築き上げたものに、片足を乗せている。だから今は、「依る」のではなく、「帰る」と呼べる。
遠くに、1組の老夫婦が、丁寧に水を流し、たくさんの花を添える姿が見えた。
きっと、毎年2人で来ているのだろう。
寄り添いながら、手を合わせる姿に、しばらく見とれてしまった。
不意に、ゴオッ!という突風が吹き、僕は身を守るように、背を向けて目を瞑った。
周りの木々達は、急角度で隣にもたれ掛かっている。
でも、空を見ると、意外に雲は流れていなかった。上空は風がないのだろうか。
老夫婦もまた、何事もなかったかのように、祈りを続けていた。
留まるように、ぴったりと寄り添い合うように。
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